人に伝えたいことがあるときに、率直に言えずに遠まわしに言ってしまい、相手に伝わらずにもやもすることがある。なぜ、人は本音を言うことを避けてしまうのか?その理由を解説します。
本音を抑えてしまう2つの理由
1.自分が嫌われたくない
2.相手を傷つけたくない
このどちらかの理由を抱えて、言えないことが多いのが現実です。
では、これらの理由をどうすれば克服することができ、本音を言えるようになるのでしょうか?
自分が嫌われたくないことが理由で、本音を言えない人へ
相手に好かれるか、嫌われるかは、自分でコントロールすることはできません。これが結論です。もし、仮にコントロールができるとしても、本来の自分の気持ちではないことを言うことは、架空の自分を自分の中に作ることになります。それは、相手に架空の自分を好きになってもらうことです。このような関係は長くは続きません。さらに別の人に好かれるために、さらに違う自分を作らなければならず、自分で自分が分からなくなります。
相手を傷つけたくなくて、本音を言えない人へ
相手を傷つけたくなくて本音を正直に言わない人は、実は自分を守りたいことが多い人です。本音にもいろいろありますが、言えない本音は自分にとって言いづらいことがほとんどです。相手への思いやりのつもりで本音を言っていないと思っている人は、実は自分を守るために言っていないことに、まずは気付くことが必要です。
本音を言うために、知っておくべき5つのこと
本音は自分で分かっていないことが多い。
本当の自分の意見や気持ちを自分で知っている人は意外に少ないです。多くの働く人たちはどこかに所属していて、その所属のルールを守ることを当然だと思っています。そして、長い間同じルールに従っていると、無意識のうちに、ルールに従った意見や気持ちを自分の本音と理解するようになります。人は本来一人の人間として、様々な権利を有していますが、権利の前に、いつものルールを守ることが前提となっていて本音を忘れてしまいます。
本音を自分に問いかける思考習慣を身につける
ひとつ前のテーマで、長い間同じルールに従っていると、自分の本音が分からなくなると書きました。もし、今あなたがそのような状態でも大丈夫です。本音は日常生活の中で、自分が自分に問いかけることでだんだんと分かってきます。例えば、なんでもいいので、自分が優先したいことを自分の思うように優先させてみてください。最初は他人が関わらないような事柄がいいでしょう。
「今日はこっちの道を歩いて帰りたいから、いつもと違う道で帰る。」
「通勤電車で、隣にうるさい人が入ってきたから、隣の車両に移ろう。」
このように、簡単なことで大丈夫です。自分の意志で自分で決めて行動することをしてみてください。そうすると、段々と何かをする前に、自分が自分に問いかける習慣がついてきます。
本音が人を傷つけることは、実は少ない
悪くないのに、すみませんというのが癖になっていたり、思ってもいないのに、お手数をおかけしますが・・・などと言ったり、このようなことが多くないでしょうか?本当に思って言っている人は大丈夫ですが、思っていないのに言っていたら要注意です。建前だけでコミュニケーションをとっていると、相手も自分に対して建前で言葉を発してきます。気を付けてください。
さて、ここでいう本音は自分の気持ちや感情表現のことを指します。例えば、あなたに嫌いな上司がいるとします。あなたの本音はこうでしょう。
「あの上司のことが嫌い。」
そして、面と向かって上司に、
「あなたのことが嫌いです。」
と、言ったとします。
それで、あなたは満足でしょうか?
そして、相手は正直に言ってもらってうれしいでしょうか?
きっと、両者がうれしくないはずです。なぜでしょうか?
それは、あなたが言いたいこと、つまり本音は上司が嫌いということではないからです。
えっ、どういうこと?私は確かに上司が嫌い・・・でも、言ってもすっきりしない・・・
ここからがアサーティブの出番です。
一つの事実に対して、一つの本音を言う
先ほどの嫌いな上司を例にして考えましょう。あなたは上司の何が嫌いなのでしょうか?そして、何をきっかけに嫌いになったのでしょうか?ここがポイントです。とにかく上司が嫌い!存在が嫌!というのは、少しきつい言い方をすると、人権侵害になります。だから、面と向かって「あなたのことが嫌いです。」と言っても、言った自分が悪いことをしている気分になり、すっきりしないのです。
「上司がいつも自分を否定するところが嫌い!」
というのなら、あなたの本音になります。これが本音です。
少し難しい定義をしますが、アサーティブでは、本音とは、
「本音=事実+その事実に対するあなたの気持ち」
となります。
相手の人格を決して否定しない
なぜ人格を否定しない方がいいのでしょうか?それは自分が傷つくからです。先ほどのテーマでもご紹介しましたが、
「あなたのことが嫌いです。」
と言っても、自分がうれしくないですよね。
実は相手を傷つけても、自分がうれしくない。一瞬、自分の気持ちが解放されても、後悔の気持ちが後からやってきます。
アサーティブの基本は、自分も相手もWin-Winになるということです。
本音を言うためにすること
何に対して本音を言うのかを、まず決定する
上司のことが嫌いです!だと、実は対象が広すぎて、全部を否定しているだけになってしまいます。具体的に上司の行動や言葉を取り上げて、それに対してどういう気持ちを抱いているのかを自分に問いかけるのが一番です。
例えば、
「上司の口調が厳しくて、何を言われても自分が悪いと思ってしまう。」
「後輩が言われたことを理解していなくても、はい!と返事をする。」
「取引先のAさんが、いつも説明時間が長すぎて、質問をする時間がない。」
これらの例のように、事実を具体的にすればするほど、自分の気持ちも明確になってきます。
あなたの本音(気持ち)をシンプルな短い言葉で、3つ挙げる
自分の本音が一つで、これが自分の気持ちのすべてだと思って伝えると、大体失敗します。それは、冷静ではない心の状態での本音の可能性が高いからです。
冷静に自分の気持ちを表現するには、自分の気持ちを表現する言葉を3つ用意しましょう。そしてその中から一つを選んで、相手に伝える文章にすることです。
「3つの中から1つを選ぶ」ことは1つの中から1つを選ぶよりも、自分の本音の精度が確実に上がります。
「上司の口調が厳しい。」に対して、
・必要以上に恐れてしまう
・厳しいと思っている自分が情けない
・何も思っていない。
のように、3つの気持ちの言葉がでてきました。
実は、この3つの気持ちの言葉を探しているときに、自分がどんな感情なのかを心に問いかけたはずです。自分の本音に迫るには、この時間がとても大事です。
相手にして欲しいこと(提案)を決める
ここまでのところで、何に対しての本音なのかを絞り込み、どんな気持ちなのかを問いかけました。そして、最後に相手にお願いすることを考えます。つまり、提案です。ここでも、「上司の口調が厳しい」という事例を取り上げます。
上司の口調が厳しいことに対して、
・ゆっくり話して欲しい
・厳しいと感じているのは自分の思い込みかどうかを確認したい
などが提案になります。
まとめ
いかがでしたか?今回は相手に本音を言うためのステップについて解説いたしました。何に対して、自分がどんな気持ちを抱いていて、何を相手にお願いしたいのかを順を追って出していくことで、必ず相手に伝えることができる形であなたの本音が出てきます。一度、やってみるだけで効果は絶大です。ぜひ、一度お試し下さい。実際のアサーティブコミュニケーションを体験したい人は、ぜひアサーティブ講座にお越しください。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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